MakeUseOf:Wi-Fiのことはもうご存知だと思いますが、これからは「Li-Fi」(ライファイ)についても知っておく必要があります。この新技術は、まだ生まれたばかりではあるものの、インターネットの使い方を変えるかもしれません。Li-Fiは、現行のWi-Fiを超える超高速のデータ通信が可能で、エネルギー効率も良く、さらにはセキュリティ向上の可能性をも秘めています。

とはいえ当然ながら、プラスの要素と同じくらいのマイナス要素も持っています。

Li-Fiは、「Light Fidelity」の略で、ここ最近、にわかに話題になっています。エストニアのVelmenniという会社が、実際のオフィス環境でLi-Fiの実用化テストを行ない、毎秒10億ビット、すなわち1Gbpsの速さで、デバイス間のデータ通信に成功したからです。これは今実際に使われているWi-Fiのおよそ100倍ものスピードです。実験環境では、224Gbpsを達成しています。

そして、そうした超高速通信を可能にしているのは、ごく普通の光なのです。

Li-Fiってなに?

Li-Fi技術のパイオニアであるエジンバラ大学のHarold Haas教授は、pureLiFi社を設立し、Li-Fiの製品化に取り組んでいます。

Li-Fiは光、厳密にはLED電球に100%依存して通信を行ないます。ある意味、LED技術とインターネットを結びつけるコネクテッド・ライティングから一歩進んだ段階と言えるでしょう。簡単に言えば、Li-Fiは光波を使ったデータ通信です。一方のWi-Fiは電波を利用しています。

つまり、Li-Fiは完全に無線であり、その点では現行のWi-Fiと同じです。Haas教授はまた、Li-Fiは既存のLED電球技術を使って運用できる点を強調しています。ただし、「既存の」といっても、みなさんの自宅に取り付けられているような「既存のLED電球」が使えるわけではないことに注意が必要です。Li-Fiは実際には、Wi-Fiの規格である802.11と同じような無線LANの環境下で機能します。

結局は、新しい電球が必要になりますし、お使いのスマートフォンやノートパソコンにも、新たなテクノロジーを使った光センサーを搭載しなければなりません。光センサー(別名、光検出器)は、デバイスが受けとる光を「読み取る」ためのものです。

どんな仕組みなの?

Li-Fiの仕組みは、自宅にあるテレビの赤外線技術の仕組みとよく似ています。赤外線の原理はとてもシンプルです。たとえば、リモコンのボタンを押して「チャンネルを変える」という指示を入力すると、その内容がバイナリコードに変換されます。

次に、バイナリコードはリモコンセンサーが出す赤外線に乗って伝送されます。すると、テレビにある赤外線センサーがその光波を受信して解読し、指示された通りにチャンネルを変えるわけです。

Li-Fiの仕組みを表したのが、PureLiFi社が作成したインフォグラフィックによると、インターネットとルーター/サーバーがケーブルに接続されており、そのケーブルは、家の中に設置されているLED電球につながっています。LED電球はそこから、変調光波のかたちでデータを伝送します。すると、スマートフォンやノートパソコンに搭載されている光センサーがそれをキャッチして、解読するという仕組みです。

よって、LED電球の光が当たっていて、光検出器がその光を「見る」ことができるなら、どこででもインターネットにアクセスできるのです。しかもそのスピードは、Wi-Fiを上回ります。

でもこれでは、光源(電球)と受光者(スマートフォンやノートパソコン)の間に光を遮るものがあると、Li-Fiは使えません。正しく設定されていればWi-Fiは壁を通り抜けられますが、Li-Fiは、壁に通信を阻まれてしまいます。

Li-Fiはなぜそれほど期待されているの?

Li-Fiの実用化テストを実施したVelmenni社が制作した上のデモ動画を見ると、この技術には驚くべき可能性が秘められていることがわかります。Li-Fiには、Wi-Fiよりも明らかに優れている点がいくつかあります。

  1. 電波の混雑や無線がつながらない場所に悩まされることがありません。
  2. 現行のWi-Fiよりも通信速度が断然速いです。
  3. 大量の電気を消費する電波塔が必要なWi-Fiよりも、エネルギー効率に優れています。また、Haas教授の構想通り、光検出器の電源を太陽電池でまかなえば、ワイヤレス充電とインターネットへの無線接続が同時にできるようになるかもしれません。
  4. Li-FiはLED電球の光が直接当たる場所でなければ使えないので、家の外にいる人間は屋内のシステムに侵入できません。よって、Wi-Fiよりセキュリティ面が向上しそうです。ただし、望遠レンズと最適に調整された光センサーがあれば、それが覆される可能性があると「Techcrunch」は指摘しています

Li-Fiの問題点とは?

これまでお話しした内容はどれも嬉しいことばかりですが、Li-Fiには克服すべき大きな問題点がいくつかあります。

  1. Li-Fiは直射日光が当たる場所(もしくは強烈な光を浴びる変則的な環境)では使えません。光検出器が変調光波を検出できなくなるからです。変則的な環境がどういった状況を指すのかは不明ですが、Velmenni社とHaas教授の上のデモ動画からわかるように、多少ならば周囲が全体的に光で照らされていても、Li-Fiが使えることはあるようです。
  2. 直接光の当たる場所でないとLi-Fiを使えない点が、大きなネックになる可能性があります。Li-Fi用の電球は自宅のリビングにしかないのに、寝室に移動したくなったらどうしたら良いのでしょうか。その場合は残念ながら、寝室にもLi-Fi対応の電球を設置しなければインターネットは使えません
  3. Li-Fiを使うなら、LED照明と通信配線を新たに導入しなければなりません。

Li-Fiはインターネットを劇的に変える?

正直なところ、今の段階で判断するのは時期尚早です。Li-Fi技術を推進する人々は、Li-Fiは既存の設備に取って代わるのではなく、インターネットの使い勝手を改善する新たな接続源として使われるようになるのではないかとしています。PureLiFi社はイラストを使って、LTEからWi-Fi、Li-Fiと場所に応じて使い分けるケースを説明しています。

Li-Fiが大規模に導入されることはおそらく当分ないでしょう。この技術に関しては、PureLiFiが先頭に立っていますが、フランスのハイテク企業一社も仲間入りを果たし、2016年の第3四半期までには製品化したいとしています。

いったいどうなるの?

現時点では、何も変わらないと言えそうです。

Li-Fiはいかにも洗練されたテクノロジーのようですし、現行のWi-Fiやその他のワイヤレス接続を補うものになるかもしれません。Li-Fiが、既存の技術に完全に取って代わってしまうことだってあり得るでしょう。けれども、私たち消費者が実際に使えるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。

その日が来るまでは、Haas教授のLi-Fiに関する最新のデモ動画をご覧ください。LED電球とLi-Fi、太陽電池が融合することで、どんなスマートホームが将来実現するのか、目を見張るかもしれませんよ。

Li-Fi Is 100x Faster Than Wi-Fi, But What's the Catch? | MakeUseOf

Mihir Patkar(訳:遠藤康子/ガリレオ)

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